《吾輩は猫である》第90章


陸证韦蓼蓼扦ⅳ搿¥猡盲趣馐皱V(てじょう)をはめているのだから、出そうと云っても出る気遣(きづかい)はない。通例のものならこの様子でたいていはわかるはずだが、この主人は当世の人間に似合わず、むやみに役人や警察をありがたがる癖がある。御上(おかみ)の御威光となると非常に恐しいものと心得ている。もっとも理論上から云うと、巡査なぞは自分達が金を出して番人に雇っておくのだくらいの事は心得ているのだが、実際に臨むといやにへえへえする。主人のおやじはその昔場末の名主であったから、上の者にぴょこぴょこ頭を下げて暮した習慣が、因果となってかように子に酬(むく)ったのかも知れない。まことに気の毒な至りである。
巡査はおかしかったと見えて、にやにや笑いながら「あしたね、午前九時までに日本堤(にほんづつみ)の分署まで来て下さい。――盗難品は何と何でしたかね」
「盗難品は……」と云いかけたが、あいにく先生たいがい忘れている。ただ覚えているのは多々良三平(たたらさんぺい)の山の芋だけである。山の芋などはどうでも構わんと思ったが、盗難品は……と云いかけてあとが出ないのはいかにも与太郎(よたろう)のようで体裁(ていさい)がわるい。人が盗まれたのならいざ知らず、自分が盗まれておきながら、明瞭の答が出来んのは一人前(いちにんまえ)ではない証拠だと、思い切って「盗難品は……山の芋一箱」とつけた。
泥棒はこの時よほどおかしかったと見えて、下を向いて着物の襟(えり)へあごを入れた。迷亭はアハハハと笑いながら「山の芋がよほど惜しかったと見えるね」と云った。巡査だけは存外真面目である。
「山の芋は出ないようだがほかの物件はたいがい戻ったようです。――まあ来て見たら分るでしょう。それでね、下げ渡したら請書(うけしょ)が入るから、印形(いんぎょう)を忘れずに持っておいでなさい。――九時までに来なくってはいかん。日本堤(にほんづつみ)分署(ぶんしょ)です。――浅草警察署の管轄内(かんかつない)の日本堤分署です。――それじゃ、さようなら」と独(ひと)りで弁じて帰って行く。泥棒君も続いて門を出る。手が出せないので、門をしめる事が出来ないから開け放しのまま行ってしまった。恐れ入りながらも不平と見えて、主人は睿Г颏栅椁筏啤ⅳ预筏悚辘攘ⅳ魄肖盲俊?br />
「アハハハ君は刑事を大変尊敬するね。つねにああ云う恭謙(きょうけん)な態度を持ってるといい男だが、君は巡査だけに鄭寧(ていねい)なんだから困る」
「だってせっかく知らせて来てくれたんじゃないか」
「知らせに来るったって、先は商売だよ。当り前にあしらってりゃ沢山だ」
「しかしただの商売じゃない」
「無論ただの商売じゃない。探偵と云ういけすかない商売さ。あたり前の商売より下等だね」
「君そんな事を云うと、ひどい目に逢うぜ」
「ハハハそれじゃ刑事の悪口(わるくち)はやめにしよう。しかし刑事を尊敬するのは、まだしもだが、泥棒を尊敬するに至っては、驚かざるを得んよ」
「誰が泥棒を尊敬したい」
「君がしたのさ」
「僕が泥棒に近付きがあるもんか」
「あるもんかって君は泥棒にお辞儀をしたじゃないか」
「いつ?」
「たった今平身低頭(へいしんていとう)したじゃないか」
「馬鹿あ云ってら、あれは刑事だね」
「刑事があんななりをするものか」
「刑事だからあんななりをするんじゃないか」
「頑固(がんこ)だな」
「君こそ頑固だ」
「まあ第一、刑事が人の所へ来てあんなに懐手(ふところで)なんかして、突立(つった)っているものかね」
「刑事だって懐手をしないとは限るまい」
「そう猛烈にやって来ては恐れ入るがね。君がお辞儀をする間あいつは始終あのままで立っていたのだぜ」
「刑事だからそのくらいの事はあるかも知れんさ」
「どうも自信家だな。いくら云っても聞かないね」
「聞かないさ。君は口先ばかりで泥棒だ泥棒だと云ってるだけで、その泥棒がはいるところを見届けた訳じゃないんだから。ただそう思って独(ひと)りで強情を張ってるんだ」
。。
九 … 13
/小。说+
迷亭もここにおいてとうてい済度(さいど)すべからざる男と断念したものと見えて、例に似ず黙ってしまった。主人は久し振りで迷亭を凹(へこ)ましたと思って大得意である。迷亭から見ると主人の価値は強情を張っただけ下落したつもりであるが、主人から云うと強情を張っただけ迷亭よりえらくなったのである。世の中にはこんな頓珍漢(とんちんかん)な事はままある。強情さえ張り通せば勝った気でいるうちに、当人の人物としての相場は遥(はる)かに下落してしまう。不思議な事に頑固の本人は死ぬまで自分は面目(めんぼく)を施こしたつもりかなにかで、その時以後人が軽蔑(けいべつ)して相手にしてくれないのだとは夢にも悟り得ない。幸福なものである。こんな幸福を豚的幸福と名づけるのだそうだ。
「ともかくもあした行くつもりかい」
「行くとも、九時までに来いと云うから、八時から出て行く」
「学校はどうする」
「休むさ。学校なんか」と擲(たた)きつけるように云ったのは壮(さかん)なものだった。
「えらい勢(いきおい)だね。休んでもいいのかい」
「いいとも僕の学校は月給だから、差し引かれる気遣(きづかい)はない、大丈夫だ」と真直に白状してしまった。ずるい事もずるいが、単純なことも単純なものだ。
「君、行くのはいいが路を知ってるかい」
「知るものか。車に仱盲菩肖堡性Uはないだろう」とぷんぷんしている。
「静岡の伯父に譲らざる枺┩à胜毪摔峡证烊毪搿?br />
「いくらでも恐れ入るがいい」
「ハハハ日本堤分署と云うのはね、君ただの所じゃないよ。吉原(よしわら)だよ」
「何だ?」
「吉原だよ」
「あの撸Ю韦ⅳ爰俊?br />
「そうさ、吉原と云やあ、枺─艘护膜筏胜い浃汀¥嗓Δ馈⑿肖盲埔姢霘荬ぁ工让酝ぞ蓼郡椁い堡搿?br />
主人は吉原と聞いて、そいつはと少々逡巡(しゅんじゅん)の体(てい)であったが、たちまち思い返して「吉原だろうが、撸Ю坤恧Δⅳい盲郡笮肖仍皮盲恳陨悉悉盲刃肖工热毪椁钉毪趣长恧肆ξ叮à辘螅─且姢护俊S奕摔系盲皮长螭胜趣长恧艘獾丐驈垽毪猡韦馈?br />
迷亭君は「まあ面白かろう、見て来たまえ」と云ったのみである。一波瀾(ひとはらん)を生じた刑事事件はこれで一先(ひとま)ず落着(らくちゃく)を告げた。迷亭はそれから相変らず駄弁を弄(ろう)して日暮れ方、あまり遅くなると伯父に怒(おこ)られると云って帰って行った。
迷亭が帰ってから、そこそこに晩飯をすまして、また書斎へ引き揚げた主人は再び拱手(きょうしゅ)して下(しも)のように考え始めた。
「自分が感服して、大(おおい)に見習おうとした八木独仙君も迷亭の話しによって見ると、別段見習うにも及ばない人間のようである。のみならず彼の唱道するところの説は何だか非常識で、迷亭の云う通り多少瘋癲的(ふうてんてき)系統に属してもおりそうだ。いわんや彼は歴乎(れっき)とした二人の気狂(きちがい)の子分を有している。はなはだ危険である。滅多(めった)に近寄ると同系統内に引(ひ)き摺(ず)り込まれそうである。自分が文章の上において驚嘆の余(よ)、これこそ大見識を有している偉人に相摺胜い人激まzんだ天道公平事(てんどうこうへいこと)実名(じつみょう)立町老梅(たちまちろうばい)は純然たる狂人であって、現に巣鴨の病院に起居している。迷亭の記述が棒大のざれ言
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