「どんな帯って、そんなに何本もあるもんですか、'子(くろじゅす)と縮緬(ちりめん)の腹合せの帯です」
「'子と縮緬の腹合せの帯一筋――価(あたい)はいくらくらいだ」
「六円くらいでしょう」
「生意気に高い帯をしめてるな。今度から一円五十銭くらいのにしておけ」
「そんな帯があるものですか。それだからあなたは不人情だと云うんです。女房なんどは、どんな汚ない風をしていても、自分さい宜(よ)けりゃ、構わないんでしょう」
「まあいいや、それから何だ」
「糸織(いとおり)の羽織です、あれは河野(こうの)の叔母さんの形身(かたみ)にもらったんで、同じ糸織でも今の糸織とは、たちが摺い蓼埂?br />
「そんな講釈は聞かんでもいい。値段はいくらだ」
「十五円」
「十五円の羽織を着るなんて身分不相当だ」
「いいじゃありませんか、あなたに買っていただきゃあしまいし」
「その次は何だ」
「愦蛔恪?br />
「御前のか」
「あなたんでさあね。代価が二十七銭」
「それから?」
「山の芋が一箱」
「山の芋まで持って行ったのか。煮て食うつもりか、とろろ汁にするつもりか」
「どうするつもりか知りません。泥棒のところへ行って聞いていらっしゃい」
「いくらするか」
「山の芋のねだんまでは知りません」
「そんなら十二円五十銭くらいにしておこう」
「馬鹿馬鹿しいじゃありませんか、いくら唐津(からつ)から掘って来たって山の芋が十二円五十銭してたまるもんですか」
「しかし御前は知らんと云うじゃないか」
「知りませんわ、知りませんが十二円五十銭なんて法外ですもの」
「知らんけれども十二円五十銭は法外だとは何だ。まるで論理に合わん。それだから貴様はオタンチン·パレオロガスだと云うんだ」
。。
五 … 6
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「何ですって」
「オタンチン·パレオロガスだよ」
「何ですそのオタンチン·パレオロガスって云うのは」
「何でもいい。それからあとは――俺の着物は一向(いっこう)出て来んじゃないか」
「あとは何でも宜(よ)うござんす。オタンチン·パレオロガスの意味を聞かして頂戴(ちょうだい)」
「意味も何(な)にもあるもんか」
「教えて下すってもいいじゃありませんか、あなたはよっぽど私を馬鹿にしていらっしゃるのね。きっと人が英語を知らないと思って悪口をおっしゃったんだよ」
「愚(ぐ)な事を言わんで、早くあとを云うが好い。早く告訴をせんと品物が返らんぞ」
「どうせ今から告訴をしたって間に合いやしません。それよりか、オタンチン·パレオロガスを教えて頂戴」
「うるさい女だな、意味も何にも無いと云うに」
「そんなら、品物の方もあとはありません」
「頑愚(がんぐ)だな。それでは勝手にするがいい。俺はもう盗難告訴を書いてやらんから」
「私も品数(しなかず)を教えて上げません。告訴はあなたが御自分でなさるんですから、私は書いていただかないでも困りません」
「それじゃ廃(よ)そう」と主人は例のごとくふいと立って書斎へ這入(はい)る。細君は茶の間へ引き下がって針箱の前へ坐る。両人(ふたり)共十分間ばかりは何にもせずに黙って障子を睨(にら)め付けている。
ところへ威勢よく玄関をあけて、山の芋の寄贈者多々良三平(たたらさんぺい)君が上(あが)ってくる。多々良三平君はもとこの家(や)の書生であったが今では法科大学を卒業してある会社の鉱山部に雇われている。これも実業家の芽生(めばえ)で、鈴木藤十郎君の後進生である。三平君は以前の関係から時々旧先生の草彛Вà饯Δ恚─蛟L問して日曜などには一日撸Г螭菐ⅳ毪椁ぁⅳ长渭易澶趣线h懀Г韦胜らg柄である。
「奥さん。よか天気でござります」と唐津訛(からつなま)りか何かで細君の前にズボンのまま立て膝をつく。
「おや多々良さん」
「先生はどこぞ出なすったか」
「いいえ書斎にいます」
「奥さん、先生のごと勉強しなさると毒ですばい。たまの日曜だもの、あなた」
「わたしに言っても駄目だから、あなたが先生にそうおっしゃい」
「そればってんが……」と言い掛けた三平君は座敷中を見廻わして「今日は御嬢さんも見えんな」と半分妻君に聞いているや否や次の間(ま)からとん子とすん子が馳け出して来る。
「多々良さん、今日は御寿司(おすし)を持って来て?」と姉のとん子は先日の約束を覚えていて、三平君の顔を見るや否や催促する。多々良君は頭を掻(か)きながら
「よう覚えているのう、この次はきっと持って来ます。今日は忘れた」と白状する。
「いや馈工葕棨皮Δ让盲猡工罢嫠皮颏筏啤袱い洎‘だ」とつける。細君はようやく御機嫌が直って少々笑顔になる。
「寿司は持って来んが、山の芋は上げたろう。御嬢さん喰べなさったか」
「山の芋ってなあに?」と姉がきくと妹が今度もまた真似をして「山の芋ってなあに?」と三平君に尋ねる。
「まだ食いなさらんか、早く御母(おか)あさんに煮て御貰い。唐津(からつ)の山の芋は枺─韦趣线‘ってうまかあ」と三平君が国自慢をすると、細君はようやく気が付いて
「多々良さんせんだっては御親切に沢山ありがとう」
「どうです、喰べて見なすったか、折れんように箱を誂(あつ)らえて堅くつめて来たから、長いままでありましたろう」
「ところがせっかく下すった山の芋を夕(ゆう)べ泥棒に取られてしまって」
「ぬす盗(と)が? 馬鹿な奴ですなあ。そげん山の芋の好きな男がおりますか?」と三平君大(おおい)に感心している。
「御母(おか)あさま、夕べ泥棒が這入(はい)ったの?」と姉が尋ねる。
「ええ」と細君は軽(かろ)く答える。
「泥棒が這入って――そうして――泥棒が這入って――どんな顔をして這入ったの?」と今度は妹が聞く。この奇問には細君も何と答えてよいか分らんので
「恐(こわ)い顔をして這入りました」と返事をして多々良君の方を見る。
「恐い顔って多々良さん見たような顔なの」と姉が気の毒そうにもなく、押し返して聞く。
「何ですね。そんな失礼な事を」
「ハハハハ私(わたし)の顔はそんなに恐いですか。困ったな」と頭を掻(か)く。多々良君の頭の後部には直径一寸ばかりの禿(はげ)がある。一カ月前から出来だして医者に見て貰ったが、まだ容易に癒(なお)りそうもない。この禿を第一番に見付けたのは姉のとん子である。
「あら多々良さんの頭は御母(おかあ)さまのように光(ひ)かってよ」
「だまっていらっしゃいと云うのに」
「御母あさま夕べの泥棒の頭も光かってて」とこれは妹の伲鼏枻扦ⅳ搿<毦榷唷┝季趣纤激铯捍丹訾筏郡ⅳⅳ蓼隉à铯氦椋─铯筏圃挙夂韦獬隼搐踏韦恰袱丹ⅳ丹⒂挨丹筮_は少し御庭へ出て御撸Г婴胜丹ぁ=瘠擞袱ⅳ丹蓼盲び懽婴蛏悉菠毪椤工燃毦悉瑜Δ浃庸─蜃筏い浃盲?br />
「多々良さんの頭はどうしたの」と真面目に聞いて見る。
「虫が食いました。なかなか癒りません。奥さんも有んなさるか」
「やだわ、虫が食うなんて、そりゃ髷(まげ)で釣るところは女だから少しは禿げますさ」
「禿はみんなバクテリヤですばい」
「わたしのはバクテリヤじゃありません」
「そりゃ奥さん意地張りたい」
「何でもバクテリヤじゃありません。しかし英語で禿の事を何とか云うでしょう」
「禿はボ毳嗓趣皮い蓼埂?br />
「いいえ、それじゃないの、もっと長い名があるでしょう」
「先生に聞いたら、すぐわかりましょう」
「先生
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